価格の心理的側面
『マーケティングはじめの1歩』第13回
前回の第 12 回目は「ダイナミックプライシング」について、お伝えしましたね。
見逃した方は、こちらからご覧ください。
本日は「価格設定」の第4段「価格の心理的側面」についてお伝えします。
価格を決める上で、考慮すべきポイントに「心の勘定」とも言える、価格心理があります。
多くの方は、得と損では、損の方に強く反応します。
同じ特売の商品を検討する場合でも「お安くなっていて、お得ですよ」と言われるよりも「今買わないと、損ですよ」と、言われた方が、購買率が高くなります。
心理学者であり、行動経済学者のダニエル・カーネマン氏(ノーベル経済学賞受賞)は、
実際の価値と、心理的な価値の関係性について、実験をして、価値関数を導き出しました。
選択A:80%の確率で4万円もらえる
選択B:100%の確率で3万円もらえる
あなたは、どちらを選びますか?
損益期待値は、
A:4万円×80%=3万2,000円
B:3万円なのに、
多くの人はBを選びます。
20%の0円になるリスクを回避したのです。
客観的数値と、心理的損得の価値は、一致しないのです。
実験の結果、心理的得と損の比率は1:2〜2.5と言われています。
つまり、以下の場合で
選択C:全員もれなく1万円もらえる
選択D:50%の確率で4万円もらえる
CとDを選んだ比率は、ほぼ同数となります。
また、「金額が大きくなると、損得の感覚は小さくなります」
例えば、ネットで調べて、5,000円だったドライヤーが、近所の家電量販店で、3,000円で販売していた場合、
多少持ち帰りが重くても、家電量販店で購入しようと思いますね。
2,000円の差は、とても大きく感じます。
ですが、ノートパソコンが、ネットで21万5,000円、近所の家電量販店で21万3,000円だとしても、わざわざ買いにいかず、ネットで購入してしまうでしょう。
「2,000円くらい、別にそんなに変わらないからいいか」と、感じてしまいます。
カーネマン氏と、心理学者のエイモス・トベルスキー氏が提唱したこのプロスペクト理論を理解していただいたところで、以下の質問に答えていただきましょう。
損益期待値が同じ2つの選択肢、あなたはどちらを選びますか?
キャンペーンA:
100万円の時計が、もれなく全員半額の50万円になる
キャンペーンB:
100万円の時計が、50%の確率で無料になる
損益期待値は同じ50万円ですが、多くの方は、キャンペーンAを選んだのではないでしょうか。
人は利得を目の前にした場合、確実に得をする選択肢を選ぶという心理があるからです。
では、次の場合はどうでしょうか?
キャンペーンa:
100万円の借金が、もれなく全員半額の50万円になる
キャンペーンb:
100万円の借金が、50%の確率で全額帳消しで、返さなくて良くなる
借金の額が100万円と500万円では選択が変わる人も出てくるかもしれませんが、こちらは、キャンペーンbを選択する人が多くなります。
これは、損失を回収するためには、多少のリスクはあっても、大きな利得を取りに行くという心理です。
ギャンブルの損失をギャンブルで取り戻そうとして、大きな損失を出すケースが、この心理に当てはまります。
どちらも似たような、キャンペーンで損益期待値は同額なのに、ほんの少しの状況の違い、見せ方で、人間の意思決定は大きく変わります。
このような人間の価格に対する心理を理解して、より、製品やサービスを魅力的に見せ、購買に結びつけるのがプロモーションです。
次回は、「プロモーション」についてお伝えしますので、お楽しみに。